電気と電子と電波の日記

自分のための備忘メモです

My 1st CD Player SUNSUI PC-V1000

 さて今回は思い出の機器シリーズである。あなたがCD、コンパクトディスクプレーヤーを初めて手にしたのはいつ、どんな物だったか。

私の場合は1986年頃、SUNSUIのPC-V1000という機種だった。

 http://audio-heritage.jp/SANSUI/player/pc-v1000.html

(写真は他サイトから一時拝借)
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ただし、普通に購入したのではない。この機種、当時の定価は15万円。5万円台のCDプレーヤーが破格と言われていた時代の少し前。貧乏学生には手の届かない憧れのものだった時代、ジャンクを秋葉原で手に入れて、自分で組み立てたというものだった。その姿が古いスナップにわずかに残る。

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ジャンクを手に入れたのは、若松通商

https://wakamatsu.co.jp/waka/data/profile2.html

1986年頃の若松通商は、秋葉原のミツワビル(いま上層階はメイドカフェらしい)に地下を含む複数のフロアがあって、地下はマイコン売り場だった気がする。その地下に降りる階段の踊り場に小さな売り場があり、メガネをかけたベテランの店員がいた。その踊り場で売られていたのが、このジャンクだった。

価格は5000円。ジャンクとしては高価だが、本当にCDプレーヤーとして動くのだとすれば、信じがたい価格である。とはいえ当時の金銭感覚では5000円は大金。それでも購入したということは、店頭で実動デモをしていたか、つなげば動くみたいよ~と耳打ちされたのか、買っても損する可能性は低いということだったのだろう。

このジャンク、ドライブユニットは白箱入りの新品、基板は紙袋に詰められていて、当然金属ケースは無し、という状態。製造中止で工場から放出されたのか、試作部品か保守部品の廃棄品なのだろう。

購入したジャンクを紙袋に無造作に詰め込んで、自宅に持ち帰った。

早速、組み立て。といっても完成基板なので基板間のコネクタはシルク印刷されたマークに従って接続するのみ。基板間のフラットケーブルは20本近くあったのではないかと思う。不安だったのはどこにも接続する相手の無い基板が余ったこと。

接続を何度も確認しておそるおそる電源を入れる。アナログ部のミュートを解除するリレーがカチッと鳴った。

動作確認には、CDが必要。この時、既にどこからか入手したCBSソニーの販促用のデモディスクがあったので、それを使った。収録されていた曲は、

摩天楼ブルース/東京JAP

春色のエアメール/松本典子

天使のウインク/松田聖子

など7曲くらい。レーベルの販促用ではなくCDプレーヤーの販促用のディスクだったと思う。

ドキドキしながらディスク取りだしのタクトスイッチを押すと、ガーとトレイが出てきた。ディスクを置いて、再びスイッチを押すと、キューンという音をたててスピンドルモーターが回り、レーザーピックアップがキュルキュルとディスクのTOCを探す。するとハイ読めましたとばかりに、赤色の7セグメントLEDにディスクのトラック数と総記録時間が燦然と輝いた。7曲、44分くらいだったと思う。

手に汗握る緊張の連続。深呼吸してふと気づいた。ここでPLAYのタクトスイッチを押せば、再生が始まるかもしれない。CDの1曲目は「摩天楼ブルース」だ。

おい、お前のコンパクトディスクデジタルオーディオの初体験は、それでいいのか。

オランダのPhilipsとともにコンパクトディスクを世に送り出し、歌手松田聖子を世に送り出した、SONYの神様からの神の啓示を受けて!?、ここは7曲目の天使のウインクから再生しよう。playを押し選曲ボタンで7曲目を選ぶ。するとレーザーピックアップがギュギューとディスク外縁方向に移動して、ディスクの回転が遅くなり(CLVだから)、時間表示に00:00が出た。次の瞬間、時間表示が00:01に進むと同時に、無音の中から突然、天使のウインクのイントロが聞こえてきた。ヤッター!!

なんという澄んだ音なのだろう、なんという力強い音なのだろう。デジタルオーディオ体験の初めての瞬間。その感動は、いまでもハッキリと心に刻まれている。

 

その後だが

・さすがにバラックでは使いにくいので、ドライブと基板をアルミ板に固定した。

・回路図が欲しいので、当時のSUNSUIの本社に電話したら、本社に来ればコピーしてあげるとのこと。杉並区和泉の本社に行って手に入れた。 

・その後友人に教えてあげたり、追加購入するために再び若松通商に行ったが、出回っていたのは、PC-V1000と、その廉価版姉妹モデルのPC-V500の2機種があることがわかった。最初購入したのはV1000、追加購入したのはV500だった。

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PC-V500は、ロゴや表示の配色が派手で、見かけが安っぽいが、PC-V1000とPC-V500の中味の違いは大きく3つ。リモコン有無、A/Bリピートとイントロスキップ有無といった操作系の違いと、音質的な違いになるだろうアナログ部分の構成。V1000はトランジスタのDCアンプで、2SC2784/2SA1174 2SC1845/2SA992コンプリ。V500はオペアンプNJM5532D。

V-1000のアナログ部

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V500のアナログ部

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このモデル、特徴的なのは・・・

・CDの信号処理系は、philipsのICを使用したもので、デモジュレーターはSAA7010、エラーコレクターSAA7020、データをL/R分離するSAA7000、デジタルフィルターSAA7030、D/AコンバーターTDA1540D(セラミックパッケージ)という、今になって改めて数多くのウンチクが語られる構成だった。


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特にSAA7030+TDA1540Dの構成は、philipsのリファレンスモデルLHH2000と同じというのは当時の雑誌の情報で知っていた。14bitのD/Aコンバーターにもかかわらず4fsオーバーサンプリングデジタルフィルタと組み合させてどうやって高音質を実現させているかといったあたりの話が今さらながら興味深い。

サウンドギャラリー : CD開発の経緯やCDプレイヤーの発展について

PHLIPS・フィリップス業務用CDプレーヤー LHH2000 フルレストア整備

 DJ9KW's SPDIF Interface fpr SAA7000 / SAA 7010 / SAA 7020 / SAA7030 Philips Chipsets

・細かい状態をICから取り出すことがとができたので、エンファシス有無やエラー訂正有無のLEDインジケーターを付けて楽しんでいた。

・赤色7セグメントLEDの表示は、SN7447。6と9の表示が好みではなかったので気に入らなかった。

・リモコンは、送信器はTC9132Pを使ったものだったが純正品が手に入らないので、ジャンクで購入した他社のミニコンポ用のものを利用して使っていた。当然リモコンのボタン配置は合わないが。受信部はuPC1373Hという構成だったが、リモコンを持たないV500は空きパターンになっていた。そこで秋月でHC-101という受光ユニットを使ってマイコン部に直結して使っていた。

・友人が購入した分を含めると、ハズレもあり、ディスク読み込みがスムースにいったりいかなかったり、不安定な個体もあった。

 

このCDプレーヤーは、その後大活躍してくれたが、引っ越しのどさくさで紛失してしまった。あれから30年以上・・。私のデジタルオーディオの原点がここにあることを忘れてはいない。

(回路図あります。同じような経験をされた方、いらっしゃいませんか)

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 手持ちの雑誌スキャンありました。

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