あの遊覧船は総トン数19トンだから「小型船舶」で、「小型船舶」の法定備品は
https://jci.go.jp/inspection/pdf/houteibihin.pdf
の通りで、そのうち無線設備の搭載要件はここを見ればわかる。
https://jci.go.jp/inspection/pdf/houteibihin_musen.pdf
あの遊覧船は、少なくともケータイ(携帯・自動車電話)を搭載していることで、4月20日の船舶検査(中間検査)を合格している、といった報道がなされていることから、「表 小型船舶に搭載する無線設備」を逆に見ていくと、あの船舶の「種類、海域および航行区域」は、「旅客船」「A2以内」「平水・限定沿海」に分類されるらしい。
A2海域というのは、
https://jci.go.jp/areamap/pdf_etc/enkai_a2.pdf
のこと
限定沿海というのは、沿海区域のうち、母港から最大速力で2時間以内に帰ってこれる海域のことで、船の最大速力ごとに範囲が決まることになっている。具体的な海域は
航行区域検索ページ(限定沿海) | 航行区域参考図 | 日本小型船舶検査機構
で調べられる。
北海道斜里町ウトロを母港とした場合、最大速力10ノット場合
https://jci.go.jp/areamap/pdf/010025010.pdf
最大速力15ノットの場合
https://jci.go.jp/areamap/pdf/010025015.pdf
の範囲が「限定沿海」の航行区域となる。
あの遊覧船の速力性能は不明だが、おそらく最大速力10ノットの場合の区域が航行できれば遊覧船としての営業上は充分なのだろう。
限定された沿海を航行区域とする小型船舶だから、旅客船であっても、必要な無線設備は「携帯・自動車電話」だけで良いという分類になるのだが‥。
△:限定沿海船にあっては、母港がサービスエリア内にあるものに限る。ただし、携帯・自動車電話は主要航路で通信可能な場合に限る(主要航路等申告書の提出が必要。)。
というように、主要航路で通信可能かどうかがチェックすることになっている。知床半島のケータイの通信事情が良くないのは、一般にも良く知られていることで、日本小型船舶検査機構(JCI)が、航行区域内で「ケータイが通信可能」と判断した根拠が気になる。
NTTドコモのエリアマップによればLTE/3Gは海上もカバーしているようだ。
次いでKDDI(au)はどうか、陸上も海上もウトロから北側はカバーしていない。
ソフトバンクもほぼ同様
実際、事故直前に携帯電話が使用されたという報道もあるが、おそらくNTTドコモの携帯電話なのだろう。
報道によれば、船長が所有していた携帯電話はKDDIのものだったらしい。そうだとすると航行区域で通信圏外であることは日常的に知っていたはずである。
私の所有する小型船舶も、法定備品としての無線設備は「携帯・自動車電話」なのですが船舶検査の経験では、検査員から携帯キャリアはどの会社か、3Gか4GLTEかという質問があり、実機をチェックをしていた。
(追記)日本小型船舶検査機構の「内規」では、携帯・自動車電話のエリア図の確認はせず、自己申告でOKとしていたらしい。
北海道斜里町を管轄する日本小型船舶機構(JCI)は札幌支部で、道南以外の広大なエリアをカバーしている。最近の検査日程はこれ。
https://jci.go.jp/branch/pdf/info_sapporo_2022_R031223.pdf
わざわざ札幌から検査員を派遣するのか、地域毎に検査員がいるのか。もし地域の事情を知っている検査員なら、あの船の航行区域が携帯・自動車電話だけでは不安なのはわかると思う。
いずれにしても、今回の事故で船検の甘さがクローズアップされ、今後厳しくなりそうだ。
【追記】日本小型船舶検査機構札幌支部、苦しい説明をしているな。
日本小型船舶検査機構の札幌支部長の発言
「検査は船舶安全法に基づき適正に行われたと認識している。エリア外になっていても通じることがあると聞いている。虚偽報告があっても調べられない」
ちなみに私が所有する小型船舶は、個人の船なのでアマチュア無線も通信手段として認められている。以前は国際VHF(特定船舶局)の免許を受けていたが、現在は閉局しているが、また復活しようかな。